いわゆるタワーマンション節税についてご存知でしょうか。
20階建、30階建、40階建といった高層マンション(タワーマンション)は、上層階の部屋ほど人気があるため、市場価格が高くなっています。
一方、相続税評価額は、対象の部屋が何階にあろうと変わらないため、この市場価格と相続税評価額との差を利用して相続税の節税をするのがタワーマンション節税です。
たとえば、相続開始直前に市場価格が6000万円の部屋を購入し、その相続税評価額が2000万円であったとすれば、その差額4000万円分だけ相続税評価額を圧縮することができるわけです。
マンションの相続税評価額は国税庁の定める財産評価基本通達に従って評価するのが原則です。財産評価基本通達は、税務署が不動産の評価をする際のルールであり、これに従って評価をしていれば税務署としても文句は言えないはずです。
しかし、明らかに節税を目的としたマンション購入が横行したため、国税庁としては、財産評価基本通達の例外規定「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する」を持ち出して対抗しました。この「国税庁長官の指示を受けて評価する」とは、いわゆる鑑定評価のことです。財産評価基本通達は法律ではないため法的拘束力はなく、不動産鑑定士による鑑定評価によることも認められます。ただし、鑑定評価には多額の費用がかかるため、あまり一般的ではありません。
令和4年4月19日に、意図的なタワマン節税によって相続税の額を不当に減少させたとして国税庁が追徴課税をした事件の判決が最高裁であり、国税庁が勝訴しました。この件は、国税庁が上記例外規定を適用して追徴課税をしたもので、国税庁の判断が最高裁により是認された形となりました。
この判決を受け、国税庁ではタワーマンションの評価に関する財産評価基本通達そのものの見直しに着手し、このほど、その見直し案が公表されました。
この見直し案によれば、築年数、総階数、所在階、敷地持分狭小度の4つの指標に基づき評価乖離率を算出して相続税評価額を補正することになります。
すなわち、所在階が高ければ高いほど相続税評価額が大きくなる仕組みとなっており、時価と相続税評価額との差が小さくなることが想定されるので、タワマン節税が下火になることが想定されます。
改正財産評価基本通達は令和6年1月1日以降に発生する相続・贈与に適用される見込みです。