相続税の申告において、最も税理士の手腕を問われる部分の1つが土地の評価ではないかと思います。土地の評価は、国税庁の定める財産評価基本通達に従い評価するのが原則です。すなわち、評価の対象となる土地が路線価区域内にあるのであれば、その土地の面する道路に付された路線価により評価します。しかし、土地の評価は机上の計算だけで済むものではありません。現地調査をしなければわからないことが沢山あります。
たとえば、以前評価した物件は路線価区域内にあるマンションでした。マンションの場合、いびつな土地に立地していることも少なく、あまり評価減は期待できないだろうと思っていたのですが、いざ現地に行ってみると、マンションの敷地の隣が墓地となっていました。
国税庁タックスアンサー4617によると、利用価値が著しく低下している宅地の評価については、10%の減額が認められています。なお、利用価値が著しく低下している場合とは、次の1~4までのことです。
1.道路より高い位置にある宅地または低い位置にある宅地で、その付近にある宅地に比べて著しく高低差があるもの
2.地盤に甚だしい凹凸のある宅地
3.震動の甚だしい宅地
4.1から3までの宅地以外の宅地で、騒音、日照阻害(中略)、臭気、忌み等により、その取引金額に影響を受けると認められるもの
ここで、墓地については、4.の「忌み等」に該当します。すなわち、墓地の隣にある土地には住みたがらない人が多いと想定されるため、その分取引金額も安くなるだろうということです。このため、墓地の隣にある宅地については、10%の評価減が認められるのです。墓地以外でも、高低差や凹凸、震動などは現地に行ってみないとわからないことです。土地の評価の際に現地調査が欠かせない理由はここにあります。